投稿をご覧いただきありがとうございます。今回は50代前後の方の患者様へのお話です。真面目に歯医者に通っていたにも関わらず徐々に歯を失っていく方はいらっしゃいませんか?歳をとったから、歯が減るんでしょ?そんな事はありません。適切な治療と予防をしていれば一生自分の歯で美味しくお食事することは可能です。実際、私が担当している患者様では80歳でも1本も歯を失うことなくお口元もお身体も健康な方は多くいらっしゃいます。では、どう違いがあるのでしょうか?
日本国民の80%が歯周病に罹患している
これは日本人の歯を喪失している歯の数と年齢の分布です。55歳から65歳の間で平均で見て、実に5本の歯を失っています。25歳から55歳までの30年とこの10年の喪失歯数が同じなんです。さまざまな理由があります。右上のグラフを見ていただけるとわかるように歯を失う原因の内訳を見てみると2位の虫歯(う蝕)を上回って42%約半数近くは歯周病が原因です。そして歯周病はかなり病気が進行しないと自覚症状が現れない病気です。
歯周病とはどんな病気?
歯周病とは口の中の特定の病原菌が原因で歯を支えている歯槽骨という歯を支えている土台の骨を溶かす病気です。進行すると歯がグラグラになり抜け落ちてしまう病気です。歯周病という病気はこの分類で、「歯肉炎」の段階であれば歯科医院で予防プログラムをしっかりしていればそうそう重症化することはないのですが中等度以上になるとしっかりとした治療を受けなければ病気の進行が止まらないケースも多く感じます。
⇨10代・20代からの発育誘導・予防プログラムの項目へ(準備中)
歯周病罹患率は15-24歳が20% 、25-34歳で30% 、35-44歳で40%、 45-54歳は50%、そして55歳以上は55-60%という割合になっています。ちょうど30代から40代にかけて知らず知らずのうちに歯周病にかかっていて、50代前後で重症化してトラブルが発生しているということが多いのです。そして中等度以上の歯周病をきちんと治して、メンテナンスまで行える歯科医院は多くないようにも感じます。歯医者にずっと通っていたにも関わらずどこの歯医者に行っても治らないとおっしゃられる患者様はいらっしゃいます。実際には原因を知り、適切な治療を行えば治せる病気なのです。
歯周病治療の流れ
まずは歯周病の重症度を歯周ポケット検査やレントゲンや写真などで検査し、審査・診断の後にどのような治療をするべきか計画を立てます。
これを元に歯周病治療を進めていきます。具体的には原因の歯周病菌の除去です。ここでは歯科医師だけでなく、口腔衛生の管理・治療する資格を持った歯科衛生士と治療を進めていきます。クリーニング、と言われることが多いですが病気の進行によっては実は非常に難しく回数・時間がかかる治療になることも多いです。
再評価(再検査)をして、「まだ問題がある重症な場所に関して」は麻酔をして歯ぐきを少し開いて歯周病菌の棲み家を直接目で見て、徹底的に除去することでさらに治療成績を上げることができます。適応する条件であれば、失ってしまった骨や歯ぐきを回復させるような「歯周組織再生療法」を行うことも可能です。
⇨歯を抜かない治療「歯周組織再生療法」の項目へ(準備中)
その治癒後にさらに再評価(再検査)をして歯周病が治っていることを確認してから、インプラントや被せ物(クラウン・ブリッジ)で最終的な機能回復を行います。歯周病が治っていないのに、インプラントや被せ物を入れることは例えるなら土台がしっかりしていない土地に家を建てるようなものです。想像するだけでも数年で家が倒壊することは目に見えています。インプラントや被せ物にお金をかけたのに、、という悪いニュースもこういったことが原因であることは多いのではないでしょうか?
また、歯周病によって病的な歯の移動を引き起こしているケースやすでに歯を失っている部分がある患者様は治療計画がさらに複雑になってきます。噛み合わせが維持できなくなって機能障害を起こしているからです。歯医者さんで歯周病と噛み合わせが「難しい」と言われたことがある方は気をつけた方がいいかもしれません。自分の歯を長く残していくために歯周病治療だけでなく、かみあわせ治療や矯正治療、インプラント治療など総合的な治療が必要な場合もあります。
⇨「前医で全ての歯を抜いて治療すると言われた重度歯周病の患者様の治療」の項目(準備中)
治療終了後のメインテナンスが重要
治療が全て完了してからは、「もう2度と大掛かりな治療にならないよう」に、「歯周病の再発がないよう」にメインテナンスとリスクが残った患者様に関してはサポーティブペリオドンタルセラピーへと移行していきます。適切な予防管理で自分の歯を長持ちしていただきたいので患者様のリスクごとに3ヶ月〜6ヶ月の期間で診させていただくことが非常に大事になります。
今まで歯周病と言われたことなかったなかったのに、歯医者に行ったらなぜか歯を抜かなくてはいけなかった患者様は重症になる前に一度しっかりとお口の中の精密検査を受けることをお勧めします。
監修者情報
院長 高橋貴啓(たかはしたかひろ)
経歴
- 2010年 大阪歯科大学歯学部 卒業
- 2011年 大阪歯科大学附属病院口腔外科第2講座 入局
- 2014年〜 兵庫・大阪の開業医勤務
- 2025年 岸和田おとなこども歯科 開院